ACHIEVEMENT
マイワシの窒素・炭素安定同位体比動態に関する論文が掲載されました
2023.11.14
イワシ類などの小型浮魚類の窒素と炭素の安定同位体比の変動を理解し,予測することは、それらを餌とする様々な捕食者の生態を同位体から研究するために極めて重要です。本研究では、北西太平洋,東シナ海,日本海にわたるマイワシの生息域の中で,その安定同位体比がどのように変化するかを明らかにしました。マイワシの窒素・炭素はともに明瞭な地理的・季節的傾向を示し、瀬戸内海を含む南方の沿岸域で高い値を、日本海・東シナ海で中間的な値を、太平洋沖合域では低い値を示しました。この変動は、植物プランクトンの安定同位体比の地理的傾向とほぼ一致していたことから、ベースラインの変動がイワシの同位体組成の主な決定要因であり,マイワシの栄養段階は海域間でおおよそ保存されていることが示唆されました。一方で,成魚の同位体比は仔稚魚のものに比べて明瞭な地理的な変化を示しませんでした。また、太平洋沖合域における稚魚の同位体比は、採集海域より南方の海域のベースラインを反映していることが多く、北上回遊の影響が強く表れていました。このようにマイワシの安定同位体比はベースラインの変動を強く反映しつつ、成長段階や海域によって異なる移動様式の影響を受けるため、その動態を予測することは可能ですが,簡単ではなさそうだということがわかりました。
研究内容詳細
https://www.sciencedirect.com/science/article/pii/S0079661123002069
論文情報
雑誌:Progress in Oceanography
題名:Geographic, seasonal and ontogenetic variations of δ15N and δ13C of Japanese sardine explained by baseline variations and diverse fish movements
著者:Tatsuya Sakamoto*, Taketoshi Kodama, Sachiko Horii, Kazutaka Takahashi, Atsushi Tawa, Yosuke Tanaka, Seiji Ohshmio
DOI: https://doi.org/10.1016/j.pocean.2023.103163
URL:https://www.sciencedirect.com/science/article/pii/S0079661123002069