あなたが昨日食べたマサバ、鮭、イワシ...
あなたは魚のことどのくらい知っていますか?
あなたはいくつ答えられますか?
とても身近にいるのに実は知らないことばかり。
海の生き物にはまだまだ解明されていないことがたくさんあるのです。
海の生き物たちが、いつ・どこにいて・どのような状態で
何を食べていたのか。私たちはそんな海の生き物の
知られざる謎を追っています。
だけど、海はとても広いし人間が行けない場所も多いので
海の生き物の行動すべてを見ることはできません
魚の体内、各部位を分析することで、
その魚の生き様を読み取れるようになる。
【すいしょうたい】
主にクリスタリンというたんぱく質でできています。
一度形成された水晶体の組織は代謝で入れ替わることなく、
成長するにしたがって次第に内部へと凝縮されていきます。
このため、タマネギを剥くように水晶体を剥がしていき、中心部から外側に向かって分析することで、過去から最近までの連続的な情報を復元することができます。
【じせき】
耳石を分析することで、経験した水温やエネルギー消費量を推定することができます。
耳石は一度形成されると再吸収されない性質を持っているため、履歴を調べるのに最適であるため、特に研究が進んでいます。
【けつえき
ないぞう
せいしょくそう】
これらは部位ごとに入れ替わるタイミングや期間が違うので、それぞれの部位から独自の情報を得ることができます。
例えば、生殖巣は産卵のために栄養を蓄える海域の情報、数日で入れ替わる血液からは直近に過ごした海域の情報、数ヶ月で入れ替わる筋肉や内臓からはここ最近の情報を知ることができます。
複数の部位から得られる情報を組み合わせることで、より詳しい回遊情報を知ることができます。
【せきついこつ】
耳石同様に脊椎骨にも経験履歴が時系列で記録されます。
成長に伴い外側に広がっていく特徴を持っており、脊椎骨中心部には稚魚期の情報が、周辺部には最近の情報が記録されています。
移動や採餌の履歴を読み取れるようになる。
耳石や脊椎骨には木の年輪のような輪紋が刻まれています。
特に耳石には「日輪」と呼ばれる輪紋が一日一本刻まれます。
この輪紋を数えることで、生まれてからの日数や年齢が分かります!
成分が変化するタイミングを輪紋と比較しながら調べることで、
いつ生息域や生息環境が変わったのかを知ることができます。
耳石には、魚が経験した水温の情報が記録されています。
水温は季節や場所に よって違います。
耳石を分析することで南の温かい海にいたのか、北の冷たい海にいたのかがわかります。
最近、世界で初めて、魚たちが1日ごとに経験した水温を明らかにすることに成功しました!
多くの魚たちはたくさんの卵を産みますが、たいていは大人になることなく子供の時に死んでしまいます。
どんな時に生き残ることができるか知るためには、子供の頃に経験した水温などの環境を知ることが特に大切です。
眼球の水晶体に含まれる物質には魚の体内では生成されず、
魚が食べた餌からのみ吸収される物質が含まれています。
つまり、水晶体に含まれる物質を調べることで、その魚が何を食べてきたのかがわかります。
同じ群れでも子供の頃に食べていたものが異なる場合は、違う海で過ごしてきたということになります。
これは、全体の生存率をあげるための行動と考えられます。
このように食べたものから魚の生存戦略を知ることもできます。
各部位を分析し生態履歴を読み解くことで、
その魚の移動経路をピンポイントで特定できる。
「なぜ回遊するのか」仮説を立てる
検証用試料の収集
バイオロギングによる直接追跡・目視観察
どのぐらいの年齢のときにどこにいたのかを推定
いつどこにいて、どれだけ成長したのかを推定
高度分析班・先進応用班の分析結果を海洋循環モデルと組み合わせて回遊経路を推定
水産生態班・高度分析班・先進応用班・モデル解析班がそれぞれの得意分野で力を発揮して協力しあうことで、これまでは年単位までしか分からなかった回遊履歴が日単位までわかるようになりました。人間が見ることのできない場所やタイミングの情報を引き出すことができる「回遊履歴復元学」が確立されると環境や生態系を守るために必要不可欠な情報が得られます。これは、魚を保全したり生態系を守るのに有益な情報となります。
近年、人間活動による温室効果ガスの増加や環境汚染、生物多様性の減少など、地球環境には様々な問題が発生しています。
地球の表面積の70%を占める海に住む魚たちも、人間活動の影響を受け、大きな環境の変化に晒されています。
これにより、将来魚が取れなくなってしまうかも!?
という大きな問題が生み出されています。
しかし、回遊履歴復元学により、
魚がどこを回遊しているのかを予測できるようになれば
将来魚が採れなくなってしまうかもしれないという
問題の解決に繋がりそうです。